- はじめに「返事がないのは、興味がないから?」「声をかけても無反応。やる気がないのかな…」そんなふうに、場面緘黙(ばめんかんもく)の子どもに対して、“無関心”や“無反応”という印象を持ってしまうことが、現場でも保護者の中でも時々あります。でも、どうか忘れないでください。 話せない=気持ちがないわけではありません。表に出せないだけで、心の中には“言葉にならない思い”がいっぱいあるのです。 今回は、「見えにくい思い」に気づき、寄り添うための視点と支援の工夫をご紹介します。場面緘黙ってどんな状態?
- 無関心に見える「沈黙」の裏にある思い
- 緘黙の子どもと向き合うときに大切にしたいこと
- まとめ:「話さない」ではなく「話せない」そして「思いはある」
はじめに「返事がないのは、興味がないから?」「声をかけても無反応。やる気がないのかな…」そんなふうに、場面緘黙(ばめんかんもく)の子どもに対して、“無関心”や“無反応”という印象を持ってしまうことが、現場でも保護者の中でも時々あります。でも、どうか忘れないでください。 話せない=気持ちがないわけではありません。表に出せないだけで、心の中には“言葉にならない思い”がいっぱいあるのです。 今回は、「見えにくい思い」に気づき、寄り添うための視点と支援の工夫をご紹介します。場面緘黙ってどんな状態?
場面緘黙は、不安障害の一種であり、特定の場面(学校・人前など)で声が出なくなる状態です。
特徴としては:
- 家では普通に話すが、学校や外では話せない
- 声だけでなく、表情や動作も固まることがある
- 人に話しかけられても反応できず、誤解されやすい
- 「話さなきゃ」と思っても身体が言うことをきかない
この状態は、まるで“氷の中に閉じ込められたような感覚”とも表現されます。
しかしその氷の中には、伝えたい気持ち・関わりたい思い・やってみたい意欲がちゃんとあるのです。
無関心に見える「沈黙」の裏にある思い
以下は、実際に場面緘黙の子どもたちが語った“本音”です:
「答えはわかってたけど、声にしたら間違えそうでこわかった」
「無視したわけじゃない。でも返事しようとすると、体が固まって動かなくなる」
「話せないだけで、本当はちゃんと聞いてるし、見てるよ」
「声を出したい。でも、そのタイミングがつかめないだけなんだ」
大人の目には“やる気がない”“興味がない”ように見えても、
多くの場合はその逆であり、緊張や不安が強すぎて行動できないだけなのです。
緘黙の子どもと向き合うときに大切にしたいこと
1.表に出ていない気持ちが「ある前提」で関わる
まずは、“声が出ない=無感情”ではなく、
「思っていても出せない状態にある」という理解が出発点です。
声が出なくても:
- まばたきで反応している
- ノートをしっかり取っている
- 顔が少し動いた
- 教材にそっと手を伸ばした
それらすべてが、「ちゃんとそこに“気持ち”がある証拠」なのです。
2.小さな変化やサインに気づく視点を持つ
場面緘黙の子にとっては、
- うなずく
- 目を合わせる
- 少し笑う
…これだけでも大きな進歩です。
小さな反応を“無言”として流さず、「伝えようとしてくれた」と受け止めましょう。
声かけ例:
- 「ちゃんと見てくれててありがとう」
- 「今、反応してくれたのうれしいな」
- 「気持ち、伝わってるよ」
3.“声”だけが表現手段じゃないことを意識する
話せない子には、「伝える手段を選ばせる」ことも大切です。
たとえば:
- イエス・ノーカード
- 指差しやスタンプ
- 筆談やチャット
- 表情アイコン・表現ボード
自分に合った“伝え方”を選べることで、
「自分も参加できる」という実感が育ちます。
4.話せる日を“待つ”ではなく、話せないままでも“学べる”を支える
「いつ話せるようになるか」ではなく、
話せなくても“やりとりができる・学べる・関われる”環境をつくることが、まず第一です。
安心できる関係性の中で、「声の扉」は少しずつ開いていきます。
焦らなくても、閉じていた扉の隙間に“伝えたい”という光は届いています。
まとめ:「話さない」ではなく「話せない」そして「思いはある」
私たち大人ができることは、
「黙っている=何も考えていない」と見なすことではなく、
沈黙の中にある思いに気づき、寄り添うことです。
声はなくても、
表情がなくても、
そこにいること自体が「関わりたい」のサインです。
緘黙の子どもたちは、“伝えられない”ことに悩み、“伝わらない”ことに傷ついています。
その心に届くのは、気づこうとするまなざしと、急がせない関係性です。

